冷えを感じる人にとって、サウナは「入れば温まりそう」と思える場所です。一方で、「水風呂は大丈夫だろうか」「上がったあと、また冷えるのでは」と迷う場所でもあります。
先にお伝えすると、この記事では、サウナで冷え性を治す・改善するという話はしません。そうした効果を確かめた公的な資料は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。代わりに、冷え性とは何か、受診の目安、サウナを避けたいときを先に確かめます。そのうえで、消費者庁の資料をもとに、無理なく入る流れを整理します。
目次
- 冷え性とは?低体温とは別の「自覚症状」01
- 「低体温」とは別のもの02
- サウナの前に|冷えで受診を考えたい目安と、入らないほうがいいとき03
- 冷えに加えて、こんな症状があるとき04
- サウナを避けるとき、主治医に確かめたいとき05
- 手足が冷える人がサウナでつまずきやすい場面06
- 冷えた体のまま、熱いサウナ室へ急ぐ07
- 水風呂のあと、指先の冷たさが気になる08
- 上がったあと、着替えるまでに冷えてくる09
- 冷えを感じる人も使える、サウナの安全な流れ|資料でわかる範囲10
- 入る前|水分をとり、シャワーは手足の先から11
- サウナ室|下段から座り、汗や動悸を感じたら出る12
- 水風呂|慣らしてから、または入らない13
- 上がったあと|拭いて、着替えて、休む14
- サウナと冷えの研究|わかっていること・いないこと15
- よくある質問16
- まとめ17
冷え性とは?低体温とは別の「自覚症状」
同じページによると、冷え性は、実際に体温が下がっていたり、触ると冷たかったりするとは限りません。西洋医学の診断名ではなく、おもに自覚症状による呼び名で、はっきりした診断基準はないといいます。
北里大学東洋医学総合研究所の伊藤剛医師も、Web医事新報の特集記事(2016年)で説明しています。冷え症は「冷えがつらい」という主観的な自覚症状だ、という内容です。客観的に冷えていても、本人に自覚がなければ冷え症とは言わない、としています。なお、「冷え性」と「冷え症」は、どちらの書き方も使われています。
「低体温」とは別のもの

サウナの前に|冷えで受診を考えたい目安と、入らないほうがいいとき
冷えに加えて、こんな症状があるとき

注意
冷えのほかに、次のような症状が同時にあるときは、医療機関で相談してみるとよいとされています。例として、疲れやすい、冷たい風で指先が紫色や白色になる、どちらかの足が特に冷たい、ふくらはぎの痛みで長く歩けない、などが挙げられています。
そのほか(編集部の提案)
冷えがいつもと違う、急に強くなったと感じるときも、サウナで温めて様子を見るより、先に医療機関に相談してください。
サウナを避けるとき、主治医に確かめたいとき
注意
体調がすぐれないとき、病気の活動期(とくに熱のあるとき)、少し動くと息苦しくなるような重い心臓または肺の病気があるとき、むくみのあるとき、目に見える出血があるとき、身体が衰弱しているとき、食事や運動の直後、飲酒後(二日酔いも含む)は、利用を避けます。
慢性の病気が急に悪化してきたときは、主治医に確認してから利用します。脳卒中のあとの人、心臓の病気や高血圧で治療中の人、妊娠中の人も同じです。
水風呂に入ると動悸がする人、胸が苦しく感じる人は、水風呂には入らないほうがよいとされています。
手足が冷える人がサウナでつまずきやすい場面
冷えた体のまま、熱いサウナ室へ急ぐ
消費者庁の資料は、脱衣後すぐにサウナ室に入るような急な温度変化を伴う行為を「大変危険」としています。いわゆるヒートショックのような状態を、自ら起こすことにもつながるためです。
早坂教授も、サウナ室では1段上がると10℃ほど温度が上がるとして、まず下段に座るよう勧めています。最初から上段に座ると、急な高温で血圧が急上昇する危険があるそうです。
水風呂のあと、指先の冷たさが気になる
しょうたろう水風呂を出たあと、体はほてっているのに、手足の先だけ冷たく感じる人もいます。そう感じる理由を冷え性の人について確かめた資料は、今回参照した中にはありませんでした。
早坂教授は、サウナの利用で大切なのは体を温めることだとしています。苦手な人は無理に水風呂に入る必要はない、とも書いています。消費者庁も、水風呂が苦手な人や入ると体調が悪くなる人に向けて、サウナ浴と外気浴を交互に行うなどの入り方を挙げています。
ネット上では「冷え性の人こそ水風呂に入るとよい」という話も見かけます。出典をたどれる根拠は確かめられませんでした。公的な資料は「苦手なら無理に入らなくてよい」という立場なので、この記事では根拠にしていません。
水風呂の慣らし方や、入らないほうがいい人については、『水風呂の入り方|苦手な人の慣らし方と、入らないほうがいいとき』で詳しく扱っています。
水風呂の慣らし方を知る

サウナの入り方
水風呂の入り方|苦手な人の慣らし方と、入らないほうがいいとき
上がったあと、着替えるまでに冷えてくる
早坂教授は、入浴を終えたら、体を冷やさないようにすばやく水滴を拭き取るよう勧めています。そして着替えて、血圧が安定するまで30分ほど休憩スペースで休みます。入浴の温熱刺激によって、血圧が上下するためです。
外気浴そのものが寒く感じるときの対処は、『冬のサウナの入り方|外気浴が寒いときの対処と安全の基本』で紹介しています。
外気浴が寒く感じるときに

サウナの入り方
冬のサウナの入り方|外気浴が寒いときの対処と安全の基本
冷えを感じる人も使える、サウナの安全な流れ|資料でわかる範囲
冷えを感じる人に向けた温度・時間・セット数の目安は、今回参照した資料にはありませんでした。そのため、この記事では数字の目安を示していません。また、この流れに沿っても、事故を防げると保証するものではありません。
ここは編集部の提案です。気分が悪い、ふらつく、胸が苦しいと感じたら、途中でも早めに出て休んでください。

入る前|水分をとり、シャワーは手足の先から
いつ、何を、どれだけ飲むかは、『サウナの水分補給|いつ何をどれだけ飲む?前後の食事とお酒の注意』にまとめています。
水分のとり方を確かめる

サウナの知識
サウナの水分補給|いつ何をどれだけ飲む?前後の食事とお酒の注意
サウナ室|下段から座り、汗や動悸を感じたら出る
水風呂|慣らしてから、または入らない
上がったあと|拭いて、着替えて、休む
湯上がりに冷えにくくする準備(編集部の提案)
- 羽織るものと靴下を、手の届くところに置いておく
- 休憩は、寒く感じたら早めに屋内の席へ移る
- 髪は早めに乾かし、濡れたまま外気に当たり続けない
基本の流れを確かめる

サウナの入り方
サウナの入り方 初心者ガイド|基本の流れ・時間の目安・つまずき対策
サウナと冷えの研究|わかっていること・いないこと
| 研究 | 対象と方法 | わかったこと | 限界 |
|---|---|---|---|
| Hussain & Cohen(2018年、系統的レビュー) | 2000年以降の、定期的なドライサウナの臨床研究40件(参加者は計3,855人) | 熱で心拍出量が増え、末梢の血管抵抗が下がるなどの反応を整理。冷えへの言及は見当たらない | 研究40件のうち、ランダム化比較試験(RCT)は13件。多くは40人未満の小さな研究 |
| Gravel ほか(2019年) | 健康な中高年21人(平均66歳)。80℃前後のサウナに10分を1回、または10分を2回 | 腕の動脈の広がりやすさ(FMD)は変わらず。10分1回の条件では、直後の安静時の前腕の血流が増えた(2回の条件では変わらず) | 入った直後の変化だけを見た研究。2回入る条件で、1人が血圧の低下により途中で退室 |
| Kölegård ほか(2024年) | 健康な男性8人。5週間、週3回、片手を8℃と43℃の水に3分ごと交互に計60分 | 冷水に手を入れたときの指の皮膚温や、寒冷時の血管拡張の回数は変わらなかった。冷えによる痛みの感じ方は一時的に和らいだ | サウナではなく手だけの温冷交代浴。8人と少ない。編集部は抄録のみ確認 |
ただ、その反応が冷え性のつらさを和らげるかどうかは、別の問いです。表の2つの研究では、血管の広がりやすさの検査(FMD)や、指の皮膚温・寒冷時の血管拡張の回数は変わりませんでした。Gravel らの研究では、10分1回入った直後に前腕の血流が増えた条件もありました(2回の条件では変わらず)。どちらも人数が少なく、冷え性の人を調べたものでもありません。
「冷え性に効く」という記事を見かけたら、誰を対象に何を調べた結果なのか、確かめてみると落ち着いて読めます。わかっていないことを知ったうえで、心地よい範囲で付き合う。そのくらいの距離がちょうどいいのかもしれません。
よくある質問
Q. サウナに通えば、冷え性はよくなりますか?
A. サウナで冷え性がよくなると確かめた公的な資料や研究は、今回参照した範囲にはありませんでした。健康な中高年21人の研究では、サウナの前後で、腕の動脈の広がりやすさ(FMD)は変わりませんでした。冷えがつらいときは、まず医療機関で相談してください。
Q. 冷え性の人は、水風呂に入らないほうがいいですか?
A. 冷え性かどうかで水風呂の可否を分けた公的な基準は、確かめられませんでした。消費者庁の資料に載る早坂教授の注意事項では、苦手な人は無理に入る必要はないとしています。入ると動悸がしたり胸が苦しく感じたりする人は、入らないほうがよいとされています。消費者庁は、サウナ浴と外気浴を交互に行う入り方も挙げています。
Q. 冷え性と低体温は、何が違いますか?
A. 長寿科学振興財団の健康長寿ネットによると、冷え性は、人が寒さを感じない温度でも手足などが冷えてつらいと感じる自覚症状です。実際に体温が下がっているとは限りません。低体温は深部体温が35度以下になる状態で、命にかかわることがあります。
Q. サウナのあと、手足が冷えてきたらどうすればいいですか?
A. 早坂教授は、入浴を終えたら体を冷やさないようすばやく水滴を拭き、着替えて30分ほど休むよう勧めています。羽織るものや靴下を手元に用意し、寒く感じたら屋内で休むのが編集部の提案です。冷たい風で指先が紫色や白色になるなどの症状があれば、医療機関で相談してください。
Q. どんなときに医療機関で相談したらいいですか?
A. 健康長寿ネットは、冷えのほかに気になる症状が同時にあれば、医療機関で相談するとよいとしています。例として、疲れやすい、冷たい風で指先が紫色や白色になる、どちらかの足が特に冷たい、ふくらはぎの痛みで長く歩けない、などです。これ以外でも、気になる症状があれば医療機関で相談してください。
まとめ
入るなら、手足の先からシャワーを浴び、下段に座り、汗や動悸を感じたら出る。水風呂が苦手なら、入らなくてかまいません。上がったら、すばやく拭いて着替え、静かに休みます。
湯気の中でゆっくり呼吸して、乾いたタオルに包まれる。冷えを抱えたままでも、その時間を自分のペースで味わえれば十分です。
参考文献
- サウナ浴での事故に注意 ― 体調に合わせて無理せず安全に ―(2024年6月5日。早坂信哉教授による注意事項を含む。2026年10月31日閲覧)(消費者庁)
- 低体温(健康長寿ネット、2019年10月4日更新。2026年10月31日閲覧)(公益財団法人長寿科学振興財団)
- (1)冷えのとらえ方[特集:「冷え」の東西医学による診断と治療]伊藤剛(Web医事新報、2016年。2026年10月31日閲覧)(日本医事新報社)
- Clinical Effects of Regular Dry Sauna Bathing - A Systematic Review(Hussain J, Cohen M. Evid Based Complement Alternat Med. 2018。2026年10月31日閲覧)(PubMed Central)
- Acute effect of Finnish sauna bathing on brachial artery flow-mediated dilation and reactive hyperemia in healthy middle-aged and older adults(Gravel H ほか. Physiol Rep. 2019。2026年10月31日閲覧)(PubMed Central)
- Five weeks of intermittent hand exposures to alternating cold and hot stimuli do not modify finger cold-induced vasodilatation response(Kölegård R ほか. J Therm Biol. 2024。抄録。2026年10月31日閲覧)(PubMed)

