サウナの入り方

サウナと冷え性|冷えを感じる人が無理なく入る工夫と受診の目安

サウナと冷え性|冷えを感じる人が無理なく入る工夫と受診の目安
天井勝太郎
2026年10月31日
脱衣所の床から、足の裏にひやりとした冷たさが上がってきます。指先は冷たく、手を握っても温まった気がしない。浴室の扉を開けると、湯気の向こうから、サウナ室の木の香りが流れてきます。

冷えを感じる人にとって、サウナは「入れば温まりそう」と思える場所です。一方で、「水風呂は大丈夫だろうか」「上がったあと、また冷えるのでは」と迷う場所でもあります。

先にお伝えすると、この記事では、サウナで冷え性を治す・改善するという話はしません。そうした効果を確かめた公的な資料は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。代わりに、冷え性とは何か、受診の目安、サウナを避けたいときを先に確かめます。そのうえで、消費者庁の資料をもとに、無理なく入る流れを整理します。

冷え性とは?低体温とは別の「自覚症状」

長寿科学振興財団の「健康長寿ネット」は、「低体温」のページ(2019年10月更新)で冷え性を説明しています。症状は、人が寒さを感じない温度でも、手足などが冷えてつらいと感じることです。暖かい部屋でも手足が冷たい、布団の中でも手足が冷たくて眠れない、といった言い方をされることが多いそうです。

同じページによると、冷え性は、実際に体温が下がっていたり、触ると冷たかったりするとは限りません。西洋医学の診断名ではなく、おもに自覚症状による呼び名で、はっきりした診断基準はないといいます。

北里大学東洋医学総合研究所の伊藤剛医師も、Web医事新報の特集記事(2016年)で説明しています。冷え症は「冷えがつらい」という主観的な自覚症状だ、という内容です。客観的に冷えていても、本人に自覚がなければ冷え症とは言わない、としています。なお、「冷え性」と「冷え症」は、どちらの書き方も使われています。

「低体温」とは別のもの

健康長寿ネットは、冷え性と低体温を「似ているようで大きく違う」ものとして分けています。低体温は、体の深いところの温度(深部体温)が35度以下になることです。激しい震えや意識障害などが出て、命にかかわる状態だと説明されています。低体温では、寒さや手足の冷えを感じることはないとも書かれています。
冷え性と低体温の違いの比較図。冷え性は寒くない温度でも手足などがつらく冷える自覚症状で、体温が下がっているとは限らない。低体温は深部体温が35度以下で、激しい震えや意識障害などが出る
冷え性と低体温の違いの比較図。冷え性は寒くない温度でも手足などがつらく冷える自覚症状で、体温が下がっているとは限らない。低体温は深部体温が35度以下で、激しい震えや意識障害などが出る
この記事で扱うのは、低体温ではなく、手足などの冷えをつらく感じる「冷え性」のほうです。

サウナの前に|冷えで受診を考えたい目安と、入らないほうがいいとき

冷えの裏に、病気が隠れていることもあります。サウナの入り方を考える前に、まずここを確かめておきます。

冷えに加えて、こんな症状があるとき

健康長寿ネットは、冷え性の原因となる病気として、甲状腺機能低下症、貧血、膠原病(こうげんびょう)、閉塞性動脈硬化症などを挙げています。そして、冷えのほかに次のような症状が同時にあれば、医療機関で相談してみるとよい、としています。
冷えに加えて医療機関に相談したい症状の例。疲れやすい、冷たい風で指先が紫色や白色になる、どちらかの足が特に冷たい、ふくらはぎの痛みで長く歩けないなど
冷えに加えて医療機関に相談したい症状の例。疲れやすい、冷たい風で指先が紫色や白色になる、どちらかの足が特に冷たい、ふくらはぎの痛みで長く歩けないなど

注意

受診を考えたい目安(健康長寿ネット「低体温」より)
冷えのほかに、次のような症状が同時にあるときは、医療機関で相談してみるとよいとされています。例として、疲れやすい、冷たい風で指先が紫色や白色になる、どちらかの足が特に冷たい、ふくらはぎの痛みで長く歩けない、などが挙げられています。

そのほか(編集部の提案)
冷えがいつもと違う、急に強くなったと感じるときも、サウナで温めて様子を見るより、先に医療機関に相談してください。

サウナを避けるとき、主治医に確かめたいとき

消費者庁は2024年6月、「サウナ浴での事故に注意」という注意喚起を出しました。資料には、早坂信哉教授(東京都市大学、医師・温泉療法専門医)による注意事項が載っています。早坂教授は、サウナは体に強い温熱刺激を与えるとして、利用を避けるべきときを挙げています。

注意

消費者庁の資料に載る早坂信哉教授の注意事項より
体調がすぐれないとき、病気の活動期(とくに熱のあるとき)、少し動くと息苦しくなるような重い心臓または肺の病気があるとき、むくみのあるとき、目に見える出血があるとき、身体が衰弱しているとき、食事や運動の直後、飲酒後(二日酔いも含む)は、利用を避けます。

慢性の病気が急に悪化してきたときは、主治医に確認してから利用します。脳卒中のあとの人、心臓の病気や高血圧で治療中の人、妊娠中の人も同じです。

水風呂に入ると動悸がする人、胸が苦しく感じる人は、水風呂には入らないほうがよいとされています。
ここは編集部の提案です。冷えのことで通院している人や、薬を飲んでいる人は、サウナを使ってよいかを主治医に一度聞いておくと安心です。

手足が冷える人がサウナでつまずきやすい場面

冷えを感じる人が迷いやすい場面を、一般的な情景として見ていきます。場面ごとに、資料で言われていることを添えます。

冷えた体のまま、熱いサウナ室へ急ぐ

寒い日の脱衣所で手足が冷えていると、すぐにサウナ室へ向かいたくなるかもしれません。上段のほうが早く温まりそうに思える人もいるでしょう。

消費者庁の資料は、脱衣後すぐにサウナ室に入るような急な温度変化を伴う行為を「大変危険」としています。いわゆるヒートショックのような状態を、自ら起こすことにもつながるためです。

早坂教授も、サウナ室では1段上がると10℃ほど温度が上がるとして、まず下段に座るよう勧めています。最初から上段に座ると、急な高温で血圧が急上昇する危険があるそうです。

水風呂のあと、指先の冷たさが気になる

サウナ初心者
水風呂のあと、指先だけがいつまでも冷たい気がします
しょうたろうしょうたろう
苦手なら、水風呂に無理に入らなくてもいいんですよ
指先の色が変わるときは、上の受診の目安を確かめてください。

水風呂を出たあと、体はほてっているのに、手足の先だけ冷たく感じる人もいます。そう感じる理由を冷え性の人について確かめた資料は、今回参照した中にはありませんでした。

早坂教授は、サウナの利用で大切なのは体を温めることだとしています。苦手な人は無理に水風呂に入る必要はない、とも書いています。消費者庁も、水風呂が苦手な人や入ると体調が悪くなる人に向けて、サウナ浴と外気浴を交互に行うなどの入り方を挙げています。

ネット上では「冷え性の人こそ水風呂に入るとよい」という話も見かけます。出典をたどれる根拠は確かめられませんでした。公的な資料は「苦手なら無理に入らなくてよい」という立場なので、この記事では根拠にしていません。

水風呂の慣らし方や、入らないほうがいい人については、『水風呂の入り方|苦手な人の慣らし方と、入らないほうがいいとき』で詳しく扱っています。

上がったあと、着替えるまでに冷えてくる

髪を乾かしているうちに、足先からじわじわ冷えてくる。外気浴の風で、肩が冷たくなってくる。そんな場面もあるかもしれません。

早坂教授は、入浴を終えたら、体を冷やさないようにすばやく水滴を拭き取るよう勧めています。そして着替えて、血圧が安定するまで30分ほど休憩スペースで休みます。入浴の温熱刺激によって、血圧が上下するためです。

外気浴そのものが寒く感じるときの対処は、『冬のサウナの入り方|外気浴が寒いときの対処と安全の基本』で紹介しています。

冷えを感じる人も使える、サウナの安全な流れ|資料でわかる範囲

ここまでの資料をもとに、1回のサウナの流れを並べます。どれも冷え性のための特別な入り方ではありません。消費者庁の資料に載る、安全に入るための基本です。

冷えを感じる人に向けた温度・時間・セット数の目安は、今回参照した資料にはありませんでした。そのため、この記事では数字の目安を示していません。また、この流れに沿っても、事故を防げると保証するものではありません。

ここは編集部の提案です。気分が悪い、ふらつく、胸が苦しいと感じたら、途中でも早めに出て休んでください。
サウナの安全な6つの流れ。水分をとる、手足の先からシャワー、下段に座る、汗や動悸で出る、かけ水で慣らすか水風呂は省く、拭いて休む
サウナの安全な6つの流れ。水分をとる、手足の先からシャワー、下段に座る、汗や動悸で出る、かけ水で慣らすか水風呂は省く、拭いて休む

入る前|水分をとり、シャワーは手足の先から

早坂教授は、汗をかくサウナの前に、コップ1〜2杯の水分をとるよう勧めています。浴室に入ったら、サウナ室の前にシャワーを浴びます。温かいシャワーを手足の末端から体の中心へ順にかけて、サウナ室での血圧の急上昇を防ぐ、という手順です。床が濡れて転ぶのを防ぐため、体の水滴を拭いてからサウナ室に入ることも挙げられています。

いつ、何を、どれだけ飲むかは、『サウナの水分補給|いつ何をどれだけ飲む?前後の食事とお酒の注意』にまとめています。

サウナ室|下段から座り、汗や動悸を感じたら出る

早坂教授は、まず下段に座り、熱さに慣れたら少しずつ上段に移るよう勧めています。汗が出てきたら、滴るまで我慢せず、自分のペースでいったん出ます。汗をかいたら体温が0.5〜1.0℃ほど上がっていると考えられ、十分な温熱作用が得られたサインだといいます。動悸を感じたときも、体温が上がりすぎているサインなので、サウナ室を出るよう書かれています。
ここは編集部の提案です。手足の先が温まった感じがするまで粘る、という入り方はおすすめしません。指先の感じ方には個人差があり、実感を待つうちに長居しがちだからです。出る合図は、手足の感覚よりも、資料にある「汗」と「動悸」に置くほうが迷いにくくなります。

水風呂|慣らしてから、または入らない

早坂教授の注意事項によると、サウナの直後に突然水風呂に浸かると血圧が上がり、脳卒中や心筋梗塞などを起こすおそれがあります。そのため早坂教授は、サウナ室を出たらぬるいお湯で汗を流すよう勧めています。そして手足にかけ水をするなどして、少しずつ水風呂の温度に体を慣らします。前の章で見たとおり、苦手なら入らない選択もあります。水風呂の細かい慣らし方は、この記事では要点だけにとどめます。

上がったあと|拭いて、着替えて、休む

上がったあとは、すばやく水滴を拭いて着替え、30分ほど休みます。早坂教授は、入浴中もこまめに水分をとり、入浴後にもコップ1〜2杯の水分をとるよう勧めています。

湯上がりに冷えにくくする準備(編集部の提案)

  • 羽織るものと靴下を、手の届くところに置いておく
  • 休憩は、寒く感じたら早めに屋内の席へ移る
  • 髪は早めに乾かし、濡れたまま外気に当たり続けない
1セット全体の流れや施設でのマナーは、『サウナの入り方 初心者ガイド|基本の流れ・時間の目安・つまずき対策』にまとめています。

サウナと冷えの研究|わかっていること・いないこと

「サウナは冷え性に効く」という話の根拠になりそうな研究を、海外の論文から見ておきます。先に書くと、冷え性の人を対象にサウナを試した研究は、今回参照した論文の中にはありませんでした。
研究対象と方法わかったこと限界
Hussain & Cohen(2018年、系統的レビュー)2000年以降の、定期的なドライサウナの臨床研究40件(参加者は計3,855人)熱で心拍出量が増え、末梢の血管抵抗が下がるなどの反応を整理。冷えへの言及は見当たらない研究40件のうち、ランダム化比較試験(RCT)は13件。多くは40人未満の小さな研究
Gravel ほか(2019年)健康な中高年21人(平均66歳)。80℃前後のサウナに10分を1回、または10分を2回腕の動脈の広がりやすさ(FMD)は変わらず。10分1回の条件では、直後の安静時の前腕の血流が増えた(2回の条件では変わらず)入った直後の変化だけを見た研究。2回入る条件で、1人が血圧の低下により途中で退室
Kölegård ほか(2024年)健康な男性8人。5週間、週3回、片手を8℃と43℃の水に3分ごと交互に計60分冷水に手を入れたときの指の皮膚温や、寒冷時の血管拡張の回数は変わらなかった。冷えによる痛みの感じ方は一時的に和らいだサウナではなく手だけの温冷交代浴。8人と少ない。編集部は抄録のみ確認
消費者庁の資料にも、サウナ浴で体が温まり、血管が開いている状態という説明があります。体が熱に反応すること自体は、レビューでも整理されています。

ただ、その反応が冷え性のつらさを和らげるかどうかは、別の問いです。表の2つの研究では、血管の広がりやすさの検査(FMD)や、指の皮膚温・寒冷時の血管拡張の回数は変わりませんでした。Gravel らの研究では、10分1回入った直後に前腕の血流が増えた条件もありました(2回の条件では変わらず)。どちらも人数が少なく、冷え性の人を調べたものでもありません。

「冷え性に効く」という記事を見かけたら、誰を対象に何を調べた結果なのか、確かめてみると落ち着いて読めます。わかっていないことを知ったうえで、心地よい範囲で付き合う。そのくらいの距離がちょうどいいのかもしれません。

よくある質問

Q. サウナに通えば、冷え性はよくなりますか?

A. サウナで冷え性がよくなると確かめた公的な資料や研究は、今回参照した範囲にはありませんでした。健康な中高年21人の研究では、サウナの前後で、腕の動脈の広がりやすさ(FMD)は変わりませんでした。冷えがつらいときは、まず医療機関で相談してください。

Q. 冷え性の人は、水風呂に入らないほうがいいですか?

A. 冷え性かどうかで水風呂の可否を分けた公的な基準は、確かめられませんでした。消費者庁の資料に載る早坂教授の注意事項では、苦手な人は無理に入る必要はないとしています。入ると動悸がしたり胸が苦しく感じたりする人は、入らないほうがよいとされています。消費者庁は、サウナ浴と外気浴を交互に行う入り方も挙げています。

Q. 冷え性と低体温は、何が違いますか?

A. 長寿科学振興財団の健康長寿ネットによると、冷え性は、人が寒さを感じない温度でも手足などが冷えてつらいと感じる自覚症状です。実際に体温が下がっているとは限りません。低体温は深部体温が35度以下になる状態で、命にかかわることがあります。

Q. サウナのあと、手足が冷えてきたらどうすればいいですか?

A. 早坂教授は、入浴を終えたら体を冷やさないようすばやく水滴を拭き、着替えて30分ほど休むよう勧めています。羽織るものや靴下を手元に用意し、寒く感じたら屋内で休むのが編集部の提案です。冷たい風で指先が紫色や白色になるなどの症状があれば、医療機関で相談してください。

Q. どんなときに医療機関で相談したらいいですか?

A. 健康長寿ネットは、冷えのほかに気になる症状が同時にあれば、医療機関で相談するとよいとしています。例として、疲れやすい、冷たい風で指先が紫色や白色になる、どちらかの足が特に冷たい、ふくらはぎの痛みで長く歩けない、などです。これ以外でも、気になる症状があれば医療機関で相談してください。

まとめ

冷え性は、寒くない温度でも手足などが冷えてつらいと感じる自覚症状で、低体温とは別のものです。疲れやすい、指先の色が変わるといった症状が一緒にあるときは、サウナより先に医療機関へ。サウナで冷え性がよくなるかどうかは、確かめられていません。

入るなら、手足の先からシャワーを浴び、下段に座り、汗や動悸を感じたら出る。水風呂が苦手なら、入らなくてかまいません。上がったら、すばやく拭いて着替え、静かに休みます。

湯気の中でゆっくり呼吸して、乾いたタオルに包まれる。冷えを抱えたままでも、その時間を自分のペースで味わえれば十分です。

参考文献

  1. サウナ浴での事故に注意 ― 体調に合わせて無理せず安全に ―(2024年6月5日。早坂信哉教授による注意事項を含む。2026年10月31日閲覧)(消費者庁)
  2. 低体温(健康長寿ネット、2019年10月4日更新。2026年10月31日閲覧)(公益財団法人長寿科学振興財団)
  3. (1)冷えのとらえ方[特集:「冷え」の東西医学による診断と治療]伊藤剛(Web医事新報、2016年。2026年10月31日閲覧)(日本医事新報社)
  4. Clinical Effects of Regular Dry Sauna Bathing - A Systematic Review(Hussain J, Cohen M. Evid Based Complement Alternat Med. 2018。2026年10月31日閲覧)(PubMed Central)
  5. Acute effect of Finnish sauna bathing on brachial artery flow-mediated dilation and reactive hyperemia in healthy middle-aged and older adults(Gravel H ほか. Physiol Rep. 2019。2026年10月31日閲覧)(PubMed Central)
  6. Five weeks of intermittent hand exposures to alternating cold and hot stimuli do not modify finger cold-induced vasodilatation response(Kölegård R ほか. J Therm Biol. 2024。抄録。2026年10月31日閲覧)(PubMed)
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