サウナの知識

「ととのう」とは|感覚の仕組みと、整わないときに考えたいこと

「ととのう」とは|感覚の仕組みと、整わないときに考えたいこと
天井勝太郎
2026年10月31日
水風呂から上がり、タオルで体を拭いて、休憩の椅子に腰を下ろす。肌に残っていた冷たさがほどけ、体の内側から温かさがじんわり戻ってきます。シャワーの音や話し声が、薄い膜の向こうへ退いていく。目を閉じると、ゆっくりとした呼吸だけが続いています。

サウナ好きのあいだで「ととのう」と呼ばれるのは、こうした休憩の時間に訪れる感覚です。ただ、医師も「学術的に明確な定義はない」と話す言葉で、感じ方は人それぞれです。

この記事では、言葉の意味、感覚を5つの軸に分けた言語化、仕組みの仮説、そして「整わない」ときに考えたいことをまとめます。本文では「整う」と表記します。

「ととのう」とは|サウナのあとの休憩で訪れる心地よさ

Business Insider Japanの2022年12月の記事に、医師の加藤容崇さんが登場しています。肩書は取材当時、日本サウナ学会代表理事です。加藤さんは、「ととのう」には学術的に明確な定義はなく、サウナのあとに得られる特殊な感覚を指すと説明しています。

自身の経験としては、独特の浮遊感があり、体の輪郭があいまいになるような感覚だと語っています。体はリラックスしているのに眠くはなく、頭はすっきりしているそうです。

「美的.com」の2024年1月の記事でも、加藤さんが説明しています。「ととのう」とは、とても気持ちがよく、心身ともに快調に感じられる状態だそうです。
編集部は「整う」を、検査で測る状態の名前ではなく、体験を言い表す言葉として受け止めています。感じ方が人によって違うのは自然なことです。

「ととのう」という言葉はどこから広まった?

小学館の「サライ.jp」の2022年3月の記事は、言葉の広まりにタナカカツキさんの『サ道』が大きく関わったと紹介しています。『サ道』は2009年にエッセイとして始まり、当時はまだ「ととのう」という言葉は出ていませんでした。

その後、2011年に書籍化、2016年に漫画化、2019年にドラマ化。言葉は漫画の時期から使われていましたが、検索が大きく増えたのは2019年ごろだと同じ記事は伝えています。

サウナで整う感覚を5つの軸で言葉にする

整う感覚は、一言では表しにくいものです。ここでは、編集部が感じ方を5つの軸に分けて整理します。研究で確かめられた分類ではなく、言葉にするための手がかりです。すべてを感じる人もいれば、ひとつだけの人もいます。

下の図は1セットの時間の流れ、5つの軸は休憩中の感じ方の切り口です。
サウナ室、水風呂、休憩、余韻の4段階で感じ方が移る流れ図。サウナ室では鼓動と呼吸が速まる、水風呂では頭がすっと冴える、休憩では音が遠のいていく、余韻では考えが静まっていく
サウナ室、水風呂、休憩、余韻の4段階で感じ方が移る流れ図。サウナ室では鼓動と呼吸が速まる、水風呂では頭がすっと冴える、休憩では音が遠のいていく、余韻では考えが静まっていく

熱の抜け方

水風呂で締まった肌から、冷たさがゆっくりほどけていく。体の奥に残っていた熱が、内側から静かに広がっていくように感じる人がいます。

冬の外気浴では、頬に当たる空気は冷たいのに体の芯はまだ温かい。その境目を楽しむ人もいます。

音の遠のき方

休憩していると、話し声やシャワーの音が、少し離れた場所から聞こえてくるように感じることがあります。音と自分のあいだに、一枚の膜がかかったような感覚です。

代わりに、自分の鼓動や遠くの水音がはっきり聞こえる、と表現する人もいます。

体の輪郭

椅子に預けた背中や腕の重さが消えて、体がふわりと浮いているように感じる人がいます。手足の先がじんわり温かく、自分の体の境目がぼやけていく感じです。

先に紹介した加藤さんの「体の輪郭があいまいになるような感覚」という言葉も、この軸に近い表現です。

呼吸

サウナ室では浅く速かった呼吸が、休憩のあいだに自然と深く、ゆっくりになっていく。吸う息と吐く息の長さがそろっていく、と表現する人もいます。目を閉じて、その音に耳を澄ます時間を楽しみにする人もいます。

思考の静けさ

さっきまで気になっていたことが、いつのまにか頭から離れている。考えが止まるというより、浮かんでは静かに流れていくような感覚です。

それでいて眠いわけではなく、頭が澄んでいると感じる人もいます。加藤さんが語っていた「頭はすっきりしている」という感覚も、この軸に重なります。
5つの軸は、体調や季節、施設によって強く出たり弱かったりします。どれかひとつでも心地よく感じられたら、それも十分に「整う」時間だと、編集部はとらえています。

整う感覚の仕組みは?わかっていること・仮説・まだ言えないこと

休憩の椅子で風を受けていると、さっきまでの熱はどこへ行ったのか、この感覚は何なのかと考えてみたくなります。ここからは、仕組みについての資料を見ていきます。

自律神経の切り替えという医師の仮説

加藤さんはBusiness Insider Japanの記事で、次のような仕組みを挙げています。サウナと水風呂で、体は過酷な状況に適応しようと交感神経が活発になり、アドレナリンを多く出す。外気浴に移ると、体は危険を脱したと判断し、一気に副交感神経が優位になる。

ただ、先に出たアドレナリンは、まだ血液中に残っている。この特殊な状態が「ととのう」感覚をもたらしているのではないか、と加藤さんは指摘しています。医師の仮説として紹介されたものです。

美的.comの記事でも、加藤さんは、自律神経が急に切り替わることで幸福感を感じると説明しています。気分に関わる物質の分泌にも触れていますが、裏付けとなる研究は記事中に示されていません。

脳波を調べた小規模な研究

2023年に学術誌「PLOS ONE」に載ったChangさんらの研究は、「ととのう」状態の脳の働きを調べたものです。健康な成人20人のうち、10人がサウナに入り、残る10人はサウナの代わりに37℃の湯に入りました。サウナ、水風呂、休憩を3セット行い、休憩中の脳波を、サウナ前と比べています。

その結果、休憩中に、サウナの前と比べてシータ波とアルファ波が増えたと報告しています。湯に入った対照群では、はっきりした変化はなかったとしています。体のリラックス感などの回答にも変化がみられたとしています。

ただし参加者は20人と少人数です。また著者全員が、研究に関わる製品を開発する企業の社員で、論文に利益相反として申告されています。小規模な研究での報告、という段階の話です。

「気持ちいい」と「体にいい」は別の話

医師(米国内科専門医)の有好信博さんは、ダイヤモンド・オンラインの2026年8月の記事で、ひとつの線を引いています。気持ちよくなることと、健康によいことは別の話だというのです。気持ちよくなったことは、病気を防げた証拠でも、体力がついた証拠でもない、としています。

同じ記事は、休憩中に脈拍や脳波に落ち着く方向の変化を示す研究も紹介したうえで、それが病気の予防や体力向上の証拠にはならないとしています。

ここまでの内容を表にまとめます。
区分内容根拠
わかっていること学術的に明確な定義はない、体験を表す言葉加藤容崇さん(Business Insider Japan、2022年)
わかっていることサウナのあとの爽快感を「ととのう」と感じる人は多いダイヤモンド・オンライン(2026年)
小規模な研究で報告休憩中に、シータ波・アルファ波が増えた(37℃の湯に入った対照群では、はっきりした変化なし)PLOS ONE(2023年)。20人の研究で、著者は関連企業の社員
仮説自律神経の急な切り替えと、血液中に残るアドレナリンが感覚を生むのではないか加藤容崇さんの指摘
まだ言えないこと気分に関わる物質の分泌が、感覚の正体であること医師の説明はあるが、研究の裏付けは示されていない
まだ言えないこと整うことが健康によい、病気を防ぐということ有好信博さんは「気持ちいい」と「体にいい」は別と指摘
まだ言えないこと何分・何セットで必ず整うか今回調べた資料には示されていない
整う感覚は「健康になった証拠」ではなく、「今日のサウナは心地よかった」というサインとして受け取りたい。それが編集部の立場です。そのほうが、効果を期待して無理を重ねずに済みます。

サウナで整わないのはなぜ?考えたいこと

何セットくり返しても、整った感じがしない。入り方が間違っているのではと、不安になる人もいるかもしれません。

編集部がまず伝えたいのは、整わなくても失敗ではない、ということです。気持ちよかった、それだけでもサウナの時間には十分な意味があります。そのうえで、医師の話から見直す手がかりを紹介します。

温まり方が足りないかもしれない

Business Insider Japanの記事で加藤さんは、体がしっかり温まっていないと、ととのう状態は感じにくいといいます。体の芯まで温まってから水風呂に入る必要がある、という考えです。

温まりきる前にサウナ室を出てしまう人には、顔に乾いたタオルをかけて熱さを感じにくくする方法や、サウナの前に1〜2分湯船に入る「湯通し」を勧めています。
一方で、温まろうと我慢するのは別の話です。消費者庁の資料にある早坂信哉教授の注意事項では、汗が出てきたら滴るまで我慢せず、いったん出るよう勧めています。動悸を感じたときも出るように、としています。温まりきることより、苦しくなる前に出ることを優先してください。

水風呂に入っていない(入らなくてもよい)

空気は水より体を冷やしにくい、と加藤さんは同じ記事で説明します。外気浴だけで水風呂と同じ状態まで冷ますには30分はかかり、整いにくいという見方です。

ただし消費者庁は、水風呂が苦手な人や入ると体調が悪くなる人は、無理に入る必要はないとしています。同じ資料の早坂教授の注意事項では、ぬるいお湯で汗を流し、手足にかけ水をして、少しずつ水温に慣らすよう勧めています。水風呂で動悸がしたり胸が苦しく感じたりする人は、入らないほうがよいとしています。
編集部は、整うことより安全を優先したいと考えます。試すなら、足先だけ、ひざまで、と少しずつ。入らないという選択も、十分に成り立ちます。

慣れて、感じにくくなっている

加藤さんは、毎日のように入っていると体が慣れ、自律神経の切り替えの落差が小さくなって、ととのいにくくなると話しています。そこで超高温のサウナや超低温の水風呂に頼ると、かえって健康によくない、とも述べています。

美的.comの記事でも加藤さんは、水温が一桁台の水風呂のような過激な設定は大きなストレスになるとして、コツに「無理をしないこと」を挙げています。

整うことを目標にしすぎている

ここからは資料ではなく、編集部の考えです。「今日こそ整わなければ」と思うほど、休憩中も体の変化を探してしまい、かえって落ち着かないことがあります。

整ったかを確かめるより、風の冷たさや呼吸の音をただ感じている。そのほうが心地よかった、と感じる人もいます。回数や時間を足すより、体調に合わせて引き算するほうが、サウナと長く付き合えるはずです。

整わないと感じたら見直したいこと

  • 無理のない範囲で体が温まってから、サウナ室を出ているか(我慢は不要)
  • 水風呂は、無理のない範囲で試せているか
  • 休憩の時間と場所に、ゆとりがあるか
  • 寝不足や疲れすぎなど、体調がすぐれない日ではないか
  • 整うことを目標にしすぎていないか
1つ目と2つ目は加藤さんと消費者庁の資料をもとに、3つ目以降は編集部がまとめました。入り方の手順や時間の目安は、『サウナの入り方 初心者ガイド|基本の流れ・時間の目安・つまずき対策』で紹介しています。

整う時間と余韻を、安全に味わうために

消費者庁は2024年6月に、サウナ浴での事故への注意を呼びかける資料を公表しました。そこに載っている、東京都市大学の早坂信哉教授(医師・温泉療法専門医)の注意事項を紹介します。

入浴を終えたら、体を冷やさないよう水滴を拭いて着替え、血圧が安定するまで30分ほど休む。入浴後もコップ1〜2杯の水分をとる。こうした過ごし方を勧めています。
編集部のおすすめは、この30分を整う時間の続きとして過ごすことです。湯上がりの頬のほてり、帰り道の夜風。そうした余韻まで含めてサウナの楽しみだと感じる人もいます。

寒い季節は、外気浴で冷えすぎて、心地よさより寒さが勝つこともあります。冬の工夫は『冬のサウナの入り方|外気浴が寒いときの対処と安全の基本』にまとめました。

注意

消費者庁の資料にある早坂信哉教授の注意事項では、次のときはサウナの利用を避けるとしています。体調がすぐれないとき、食事や運動の直後、飲酒後(二日酔いも含む)などです。

心臓の病気や高血圧で治療中の人、妊娠中の人は、主治医に確認してからの利用を勧めています。水風呂に入ると動悸がしたり胸が苦しく感じたりする人は、水風呂に入らないほうが安全です。サウナは汗をかくので、入る前にコップ1〜2杯の水分をとり、入浴中もこまめに補給します。

体調に異変を感じたら、すぐに周りの人や施設の従業員に知らせてください(消費者庁)。整うことより、体の声を優先してください。

よくある質問

Q. 「ととのう」は医学用語ですか?

A. 医学用語ではありません。医師の加藤容崇さんはBusiness Insider Japanの取材(2022年)で「学術的に明確な定義はない」と話しています。サウナ後の休憩で感じる心地よさを表す、体験の言葉です。

Q. 整うと、サウナの健康効果が高まりますか?

A. 整ったかどうかは、健康効果の目安にはなりません。医師の有好信博さんはダイヤモンド・オンライン(2026年)で、気持ちよくなることと健康によいことは別の話だと書いています。整う感覚は、心地よさとして楽しむのがよいと編集部は考えます。

Q. 何セットすれば整いますか?

A. 何セットで必ず整う、という基準は今回調べた資料には見つかりませんでした。脳波の研究の3セットは、研究の条件です。体調に合わせて、無理のない回数にとどめるのが編集部のおすすめです。

Q. 水風呂に入らないと整いませんか?

A. 医師の加藤容崇さんは、外気浴だけでは体が冷めにくく整いにくいという考えです。一方で消費者庁は、水風呂が苦手な人や入ると体調が悪くなる人は、無理に入る必要はないとしています。安全を優先して、自分に合う方法を探すのがおすすめです。

Q. サウナに通い慣れると、整わなくなるのはなぜ?

A. 医師の加藤容崇さんによると、毎日のように入っていると体が慣れ、自律神経の切り替えの落差が小さくなるためです。より熱いサウナや冷たい水風呂に頼るのは、かえって健康によくないとも述べています。編集部は、整うことを目標にしすぎないことをおすすめします。

まとめ

「整う」は、学術的な定義のない、体験を表す言葉です。熱の抜け方、音の遠のき方、体の輪郭、呼吸、思考の静けさ。どこに心地よさを感じるかは人それぞれで、仕組みもまだ仮説の段階です。

整わない日があっても、失敗ではありません。湯気の向こうで呼吸がゆっくりになり、椅子の上で風を感じる。その数分間をそのまま味わうことが、次のサウナを少しだけ楽しみにしてくれるはずです。

参考文献

  1. サウナで「ととのう」って何?追い求めると悪影響も。医師に聞く正しいサウナの入り方(2022年12月27日。加藤容崇医師への取材)(Business Insider Japan)
  2. サウナの“ととのう”は「多幸感」の言い換えってホント?真相を専門家に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】(2024年1月20日)(美的.com)
  3. 【ビジネスの極意】サウナが人気を集める3つの理由|ブームの背景と問題点を解説(2022年3月8日)(サライ.jp(小学館))
  4. A study on neural changes induced by sauna bathing: Neural basis of the "totonou" state(Chang M, et al. 2023)(PLOS ONE)
  5. 【医師が教える】サウナは体によい? 「ととのう」の正体とは(2026年8月22日。有好信博)(ダイヤモンド・オンライン)
  6. サウナ浴での事故に注意 ― 体調に合わせて無理せず安全に ―(2024年6月5日。早坂信哉教授による注意事項を含む)(消費者庁)
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